HIITは空腹時にやっても大丈夫?断食中の運動で脂肪燃焼とオートファジーを最大化する方法
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「朝食前の空腹時にHIITをやっても問題ないの?」 「インターミッティングファスティング中に運動すると、断食の効果が台無しになる?」
こんな疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。
**結論から言うと、空腹時のHIITは正しく行えば脂肪燃焼効果が高く、むしろオートファジーを促進する可能性があります。**ただし、やり方を間違えると筋肉分解や低血糖のリスクもあるため、適切な知識が必要です。
この記事では、空腹時HIITの科学的なメカニズムから、メリット・デメリット、安全な実践方法まで徹底解説します。インターミッティングファスティング実践者や、朝の時間を有効活用したい方はぜひ参考にしてください。
目次
- 空腹時HIITとは?基本を理解しよう
- 空腹時HIITのメリット:脂肪燃焼とオートファジーの科学的根拠
- 空腹時HIITのデメリット:知っておくべきリスク
- インターミッティングファスティング中のHIITは問題ない?オートファジーへの影響
- 【目的別】空腹時HIITが向いている人・向いていない人
- 安全に空腹時HIITを実践するための5つのポイント
- 空腹時vs食後:結局どちらでHIITをやるべき?
- まとめ:自分に合ったタイミングを見つけよう
1. 空腹時HIITとは?基本を理解しよう
HIITの定義
HIIT(High-Intensity Interval Training)とは、高強度の運動と短い休憩を交互に繰り返すトレーニング法です。
典型的なHIITは、20秒間の全力運動と10秒間の休憩を8セット繰り返す「タバタ式」が有名ですが、運動時間や強度は自由にカスタマイズできます。
HIITの特徴:
- 短時間(4-30分)で高い運動効果
- 無酸素運動と有酸素運動の組み合わせ
- アフターバーン効果で運動後も脂肪燃焼が継続
空腹時運動のメカニズム
空腹時、特に起床直後や食後10時間以上経過した状態では、体内で以下のことが起こっています:
- 血糖値が低下している
- 肝臓・筋肉のグリコーゲン(糖質の貯蔵形態)が枯渇している
- 体が脂肪をエネルギー源として使いやすい状態になっている
この状態で運動をすると、通常時よりも脂肪燃焼が促進されると考えられています。
なぜ「空腹時HIIT」が注目されているのか
近年、インターミッティングファスティング(16時間断食)が健康法として注目される中、「断食期間中に運動をしてもいいのか?」という疑問が多く寄せられています。
特に朝活として朝食前にトレーニングをする人にとって、空腹時HIITは時間効率が良く、脂肪燃焼効果も高い理想的な選択肢に見えます。
しかし、一部では「空腹時の激しい運動は筋肉を分解する」「低血糖で危険」といった否定的な意見もあり、正しい情報が求められています。
2. 空腹時HIITのメリット:脂肪燃焼とオートファジーの科学的根拠

空腹時にHIITを行うことで得られる3つの主要なメリットを、科学的根拠とともに解説します。
メリット1: 脂肪燃焼効率が20%向上
空腹時の運動は、食後の運動と比べて脂肪燃焼効率が高いことが研究で示されています。
イギリスの学術誌『British Journal of Nutrition』に掲載された研究では、空腹時にトレッドミルで走った被験者は、食後に走った被験者と比べて約20%多く脂肪を燃焼していました。
なぜ脂肪燃焼が促進されるのか:
- 糖質が枯渇しているため、体は脂肪を優先的にエネルギー源として使う
- インスリン分泌が抑制され、脂肪分解が促進される
- 脂肪分解酵素(HSL、ATGL、PDK4)が増加する
2017年のイギリスの研究では、空腹時の運動が脂肪分解酵素を増加させ、糖質と脂質の両方の使用量を増やすことが確認されています。
メリット2: オートファジーをさらに活性化
これが最も注目すべきポイントです。空腹時に運動を加えることで、オートファジーがさらに活性化することが最新の研究で明らかになっています。
オートファジーとは:
- 細胞が古くなったタンパク質や損傷した細胞を分解・再利用する仕組み
- 「自食作用」とも呼ばれる
- 2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典教授の研究で注目
オートファジーの効果:
- 細胞の若返り
- 免疫力向上
- がん・アルツハイマー病などの予防
- 老化の抑制
断食だけでも16時間後にオートファジーは発動しますが、運動を加えると動かした筋肉の細胞で特にオートファジーが活性化することが分かっています。
青木厚医師(『空腹こそ最強のクスリ』著者)によると: 「空腹時に運動や筋トレを取り入れることで、動かした局所のオートファジーがより活性化することがわかってきました。例えば、空腹時の運動によってオートファジー活性化の効果が高まり、心筋細胞が刷新されて心機能が改善されたという論文も報告されています」
オートファジーの詳細はこちらの記事で紹介しています。
オートファジーとは?ノーベル賞受賞の仕組みから活性化する方法まで徹底解説
メリット3: 1日の代謝がアップする
朝の空腹時にHIITを行うと、その日1日の代謝が高まる効果があります。
理由:
- 交感神経が刺激され、体が活動モードに切り替わる
- **アフターバーン効果(EPOC)**が最大72時間継続
- 成長ホルモンの分泌が促進される
アフターバーン効果とは、運動後も脂肪燃焼が続く現象のこと。HIITのような高強度運動では、運動中よりもむしろ運動後の脂肪燃焼効果が高いとされています。
3. 空腹時HIITのデメリット:知っておくべきリスク

メリットが多い一方で、空腹時HIITにはリスクもあります。正しく理解して対策しましょう。
デメリット1: 筋肉分解(カタボリック)のリスク
空腹時の激しい運動では、筋肉が分解されてエネルギー源として使われる可能性があります。
カタボリック(異化作用)のメカニズム:
- 空腹時は体内のアミノ酸・グリコーゲンが不足
- エネルギーが必要になると、体は筋肉を分解してアミノ酸を取り出す
- 筋肉量が減少し、基礎代謝が低下
ただし、これは運動の種類と時間によることが重要です:
- 短時間HIIT(4-10分): 筋肉分解は最小限
- 長時間の有酸素運動(30分以上): 筋肉分解リスクが高い
- ハードな筋トレ: 栄養不足で回復が遅れる
研究によると、短時間のHIITは「筋肉分解を最小限に抑えつつ脂肪燃焼を促す方法として有効」とされています。
デメリット2: 低血糖症状のリスク
空腹時、特に起床直後は1日の中で最も血糖値が低いタイミングです。
この状態で激しい運動をすると、さらに血糖値が低下し、以下の症状が出る可能性があります:
- めまい・ふらつき
- 冷や汗
- 動悸
- 強い倦怠感
- 吐き気
**低血糖の症状が出たら、すぐに運動を中止し、糖分を摂取しましょう。**飴玉やジュースなど、素早く吸収される糖質が効果的です。
デメリット3: パフォーマンスの低下
エネルギー不足の状態では、トレーニングの質が下がる可能性があります。
- 全力が出せない
- 持久力が低下
- 集中力が続かない
- ケガのリスクが増加
特に高重量の筋トレや長時間の運動では、空腹時のパフォーマンス低下が顕著になります。
4. インターミッティングファスティング中のHIITは問題ない?オートファジーへの影響

多くの人が最も知りたいのはこの点でしょう。「せっかく16時間断食をしているのに、運動することで断食の効果が台無しになるのでは?」
結論:短時間HIITなら断食効果を妨げない
安心してください。短時間のHIIT(4-10分程度)であれば、断食期間中に行っても問題ありません。むしろオートファジーを促進する可能性が高いです。
理由:
- 短時間HIITは筋肉損傷が少ない
- 運動によってオートファジーがさらに活性化する
- 脂肪燃焼が促進され、ケトン体産生が加速
研究者の間では、「断食と運動を組み合わせることで、単独で行うよりも健康効果が高まる」という見解が広まっています。
ただし条件がある:運動の種類と時間が重要
すべての運動が断食中に適しているわけではありません。
◎ 断食中に適している運動
- 短時間HIIT(4-10分)
- ウォーキング
- ヨガ・ストレッチ
- 軽い有酸素運動
✕ 断食中に避けるべき運動
- 長時間の有酸素運動(30分以上)
- ハードな筋トレ(高重量・高ボリューム)
- マラソンなどの持久系運動
理由は明確です。オートファジーの活性化と筋肉の合成・回復は正反対の働きだからです。
オートファジーを活性化させるには:
- アミノ酸(タンパク質)を控える
- 細胞に飢餓状態を作る
筋肉の合成・回復には:
- 十分なアミノ酸(特に動物性タンパク質)
- 適切なタイミングでの栄養補給
つまり、両方を同時に最大化することはできないのです。
BCAA/EAAの落とし穴
「空腹時の運動前にBCAAやEAAを摂れば筋肉分解を防げる」というアドバイスをよく見かけます。
これは半分正しく、半分間違いです。
確かにBCAA/EAAは:
- 筋肉分解を抑制する
- パフォーマンスを維持する
しかし、デメリットもあります:
- インスリン分泌が起こり、脂肪分解が抑制される
- オートファジーが抑制される可能性がある
東京工業大学の藤田聡教授(運動生理学)は以下のように述べています: 「朝空腹で運動すればカタボリックが進んで筋肉の分解が促進します。ただ、BCAAやEAA摂取は空腹時の筋分解は抑制しますが、BCAA摂取に伴うインスリン分泌は脂肪分解も抑制します。そもそもの目的が脂肪燃焼(脂肪のカタボリズム)なら、BCAA/EAAは相反します。何を優先するか、ですね」
つまり:
- 脂肪燃焼・オートファジー優先 → BCAA/EAAなし
- 筋肉保護・パフォーマンス優先 → BCAA/EAAあり
5. 【目的別】空腹時HIITが向いている人・向いていない人
自分の目的に合わせて、空腹時HIITが適しているか判断しましょう。
空腹時HIITが向いている人
✓ ダイエット・脂肪燃焼が最優先の人
- 体脂肪率を下げたい
- 内臓脂肪を減らしたい
- 効率的に痩せたい
✓ インターミッティングファスティング実践中の人
- 16時間断食を習慣化している
- オートファジーの効果を得たい
- 細胞レベルで若返りたい
✓ 朝の時間を有効活用したい人
- 朝食前に運動する習慣がある
- 短時間で効率的にトレーニングしたい
- 1日の代謝を上げたい
✓ 健康長寿を目指す人
- アンチエイジングに関心がある
- 生活習慣病を予防したい
- 心機能を改善したい
空腹時HIITが向いていない人
✕ 筋肥大・筋力アップが目的の人
- マッチョになりたい
- 筋肉量を増やしたい
- 高重量トレーニングをしている
理由: 空腹時は筋肉の合成が進まず、トレーニング効果が十分に得られません。
✕ 低血糖の症状が出やすい人
- 過去に低血糖を経験したことがある
- 糖尿病の治療中
- めまい・ふらつきが起こりやすい
理由: 低血糖のリスクが高く、危険です。
✕ 体調が悪い・睡眠不足の人
- 風邪気味
- 前日の睡眠時間が5時間未満
- 疲労が蓄積している
理由: 空腹時の激しい運動は体に大きなストレスをかけます。
✕ 運動初心者
- 運動習慣がない
- HIITをやったことがない
- 自分の体力レベルが分からない
理由: まずは食後の運動から始めて、体を慣らしましょう。
6. 安全に空腹時HIITを実践するための5つのポイント
空腹時HIITのメリットを享受しながら、リスクを最小限に抑える方法を紹介します。
ポイント1: 短時間(4-10分)に抑える
最も重要なのは運動時間です。短時間に集中して行いましょう。
推奨される時間:
- 4分間タバタ式: 20秒運動+10秒休憩×8セット
- 6-8分間HIIT: 30秒運動+30秒休憩×6-8セット
- 最大でも10分まで
長時間の運動は筋肉分解のリスクが高まります。「短く・激しく」がポイントです。
ポイント2: ウォーミングアップを念入りに
起床直後は:
- 体温が低い
- 血圧が低い
- 筋肉や関節が硬い
いきなり激しい運動を始めるのは危険です。5-10分かけて体を温めましょう。
おすすめのウォーミングアップ:
- 肩回し、股関節回し
- もも上げ
- 軽いジョギング
- ダイナミックストレッチ
ポイント3: 水分補給は必須
起床直後は体が脱水状態です。
運動前に常温の水をコップ1杯以上(200-300ml)飲みましょう。
水分補給の効果:
- 血流改善
- パフォーマンス向上
- 低血糖リスク軽減
断食中でも水・お茶・ブラックコーヒーは摂取OK(カロリーゼロ)です。
ポイント4: 軽い栄養補給も選択肢
「完全な空腹状態だとふらつく」という人は、軽い栄養補給をしても構いません。
おすすめ:
- バナナ1本(約86kcal)
- プロテイン(20-30g)
- ナッツ一握り
ただし注意点:
- オートファジー効果は減少します
- 脂肪燃焼効果も若干低下します
完全な断食効果を得たいなら、何も食べずに運動するのがベストです。体調と目的に合わせて選択しましょう。
ポイント5: 体調優先・無理しない
以下の症状が出たら、すぐに運動を中止してください:
- めまい・ふらつき
- 冷や汗
- 動悸
- 吐き気
- 強い倦怠感
無理は禁物です。「今日は調子が悪いな」と感じたら、運動を休むか、軽いウォーキングに変更しましょう。
7. 空腹時vs食後:結局どちらでHIITをやるべき?
「結局、空腹時と食後のどちらがいいの?」という疑問に答えます。
目的別の最適解
脂肪燃焼・ダイエットが目的 → 空腹時◎
- 脂肪燃焼効率が20%高い
- 内臓脂肪の減少効果
- 1日の代謝アップ
筋肥大・パフォーマンス向上が目的 → 食後2時間◎
- 十分なエネルギーで全力が出せる
- 筋肉の合成が促進される
- トレーニング効果が最大化
健康維持・オートファジー → 空腹時◎
- オートファジーが活性化
- 細胞の若返り効果
- 心機能改善
併用戦略もあり
週に複数回トレーニングする人は、目的に応じて使い分けるのも効果的です。
例:
- 月・水・金: 空腹時HIIT(脂肪燃焼・オートファジー)
- 火・木: 食後の筋トレ(筋肉維持・強化)
- 土日: 休養または軽い運動
この方法なら、脂肪燃焼と筋肉保護の両方を実現できます。
研究者の見解
運動生理学の専門家ポリ氏は以下のように述べています: 「空腹時の運動が食後の運動と比べてどちらが脂肪燃焼効果に優位であるかについては、まだはっきりとした研究結果は出ていません。ですが、LISS(低負荷の有酸素運動)、つまり負荷の軽い運動を30~60分行うくらいであるなら、空腹状態のほうがより多くの脂肪を燃焼させられる可能性は高いと言えます」
つまり、低~中強度の運動では空腹時が有利、高強度・長時間の運動では食後が有利という使い分けが現実的です。
まとめ:自分に合ったタイミングを見つけよう
この記事のポイントをまとめます:
-
空腹時HIITは脂肪燃焼効率が約20%向上し、オートファジーも促進する
- ただし短時間(4-10分)に限る
- 長時間は筋肉分解リスクが高い
-
インターミッティングファスティング中の短時間HIITは問題なし
- 断食効果を妨げない
- むしろオートファジーをさらに活性化
- BCAA/EAA摂取はトレードオフ
-
安全に実践するには5つのポイントを守る
- 短時間・ウォーミングアップ・水分補給・体調優先・無理しない
最も重要なのは、自分の目的と体調に合わせて選択することです。
脂肪燃焼やオートファジーを優先するなら空腹時、筋肉やパフォーマンスを優先するなら食後。どちらが「正解」というわけではなく、目的によって最適解は変わります。
まずは週2-3回、朝の空腹時に4-6分程度の短時間HIITから試してみてはいかがでしょうか。体の変化を感じながら、自分に最適なタイミングを見つけていきましょう。
私が実際に実践している朝のルーティンはこちらの記事で紹介しています。
朝活で人生が変わる!科学的根拠に基づいた最強の朝ルーティン【実践者が解説】
参考文献・出典
- British Journal of Nutrition - 空腹時運動の脂肪燃焼効果に関する研究
- 青木厚『空腹こそ最強のクスリ』(アスコム)
- 大阪大学大学院 - 絶食とオートファジーに関する研究
- Journal of Applied Physiology - インターミッテントファスティングと持久力向上の研究
- Ageing Research Reviews - 断食・カロリー制限とオートファジー誘導のレビュー
- 藤田聡教授(東京工業大学)- 空腹時運動と栄養摂取に関する見解
- Cleveland Clinic - オートファジーの定義と効果
- 吉森保教授(大阪大学)- オートファジー研究
